小沢健二「魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ」6/11(土)@Zepp DiverCity

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小沢健二が5月から開始したコンサートツアー「魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ」。6月11日(土)にZepp DiverCity TOKYO の公演を見てきた。結論から言えば、非常に素晴らしい2時間を体験できたのだと思う。

小沢健二がソロ・シンガーとしてデビューし『犬は吠えるがキャラバンは進む』をリリースした時、僕は15歳。そしてリリースから20年以上を経た今にまで語り継がれる名盤『LIFE』を聴いたのが16歳。つまり、小沢健二が日本中を席巻していた絶頂期、僕もまた思春期真っ只中だったのだ。だけど、人がブログで小沢健二を語る時に陥りがちな「僕と小沢健二」的な話はここではしない。

本編のセットリストは全17曲。そのうち7曲がツアー用に書き下ろされた新曲だった。今回のツアーの特徴は「新曲をたくさんやる」とのことで、新曲の演奏が始まるとそのタイトルと歌詞がステージ後方のスクリーンに映しだされた。当然初めて聴く曲ばかりだけど、どれもソウルフルでファンクな曲だと思った。中にはまるで「ある光 part2」とでも呼べそうな曲もあった。スクリーンにはどれも小沢健二の審美眼によって丁寧に丹念に精選されたであろう言葉が綴られていた。どの歌詞も独創的で、鋭く、挑発的だった。いったいいつこんな歌詞を書き留めていたのだろうと思った。

既存曲もオリジナルのアレンジを基調としながらもリズムが強調されたタイトな演奏でグルーヴ感が増していた。既存曲の歌詞はスクリーンには出ないのでメロディーをなぞりながら頭の中で歌詞を追いかけるんだけど、ふと「魔法」という言葉が何度も出てくることに気がついた。

ところで、実は小沢健二のコンサートに足を運ぶのは初めてだったんだけど、正直それほど期待はしていなかった。スタジオ録音の新譜はもう10年リリースされていないし、近年は思想的な活動が目立つようになってきたし、コンサートで朗読するし、今年1月の渋谷クアトロのイベントの微妙さ加減(伝聞だけど)も気になったしで、小沢健二はもうすっかり楽隠居して、良くも悪くも枯れてしまったのだろうなんて思っていた。けれど、そんな僕の意地悪な見立てとは裏腹に、少なくともこのコンサートにおいては現役感バッチリな姿を見せてくれたのが嬉しかった。そう、「あの曲を演奏してくれた!」とか「あの頃の小沢健二が戻ってきた!」というのではなく、一番新しい曲が最も生命力に溢れて最も力強く、最もカッコ良かったことが嬉しかったのだ