ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ

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東京の世田谷文学館で開催されている『ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ』を見てきた。

信藤三雄というデザイナーを初めて意識したのはいつだったか。はっきりとは覚えていないけれど、おそらく90年代、コーネリアスを始めとしたトラットリア・レーベルの作品やポスターだと思う。高校生だった僕はコーネリアスの「音楽」と同時に、信藤氏が生み出す「デザイン」にも惹かれた。音楽がデザインを作り、デザインが音楽を作る。僕が音楽とデザインを結びつけるようになったのは、間違いなく信藤氏の影響によるものだ。

展示室に入ると、壁一面に張り巡らされたCDジャケットやポスターの物量に圧倒される。ちなみに館内は写真撮影もOK。しかし写真を撮るよりもこのデザインの洪水に浸っていたいという欲求のほうが上回ってしまう。どこを見渡しても信藤三雄のデザインに囲まれるこの空間は、まさに時間を忘れるような感覚に陥ってしまう。フリッパーズ・ギターピチカート・ファイヴはジャケットやポスターだけでなく、CDなどのプロダクトそのものも展示されていた。

信藤三雄と言えば、自分にとっては「渋谷系」ミュージシャンのデザイナーという印象が強い。しかしMr.ChildrenMy Little Lover松任谷由実など広くマスに向けた表現をするアーティストも、Blankey Jet Cityやエレファント・カシマシといったゴリゴリなロックも手掛ける氏にとって音楽のジャンルは関係ない。あるのは、そのミュージシャンが表現するサウンドを一枚のビジュアルに収めようとする冴えたアイデアとチャレンジ精神。

個人的にはどうしても90年代に手掛けたデザインに懐かしさを感じるけれど、優れたミュージシャンのメッセージが時代を経ても古くならないのと同様に、信藤三雄氏のデザインは時代を象徴すれど時代に風化されない強さを持っている。そんなことを感じた展示会だった。

 

シーティーピーピーのデザイン

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