米国音楽が見た渋谷系

f:id:idioteque46:20190310222919j:plain
東京のTOKYO CULTUART by BEAMSで開催された「米国音楽が見た渋谷系展」を見てきた。「米国音楽」というのは1993年に創刊された音楽雑誌。2005年の6月に刊行されたvol.23を(現在のところ)最後に雑誌としての活動は止まっているものの、僕も学生だった頃から手にしていた雑誌なので思い入れも強く(vol.23の巻末に記された「SEE YOU on NEXT ISSUE !!」の言葉を今でも心の片隅で信じている)、展示会に足を運んだ次第。


展示の内容は「米国音楽」の創刊以降の歴史年表と、バックナンバーから抜粋したページをパネル化したもの、それと、当時のフライヤー(?)や雑誌のゲラなど。CD(ロケット・オア・チリトリ!)や書籍の販売も。この展示会のために作られたTシャツもあって、それはつい一枚買ってしまった…。


渋谷系とはなんだったのか」的な論争は未だに定期的に勃発するけど、展示会のタイトルが示すとおり、「米国音楽」こそが渋谷系であり、「渋谷系」というふんわりとしたムーブメントを地に足の着いた姿勢で追い続けた唯一のメディアだったと思う。まるで海外の雑誌のようなクールで洒脱なデザインは他の音楽雑誌とは一線を画していてスノッブさを刺激するし、「米国音楽」を通じて培われたセンスは今でも残り続けていると思う。


最後に。個人的に好きだったのはvol.15(2000年4月、ソフィア・コッポラの映画『ヴァージン・スーサイズ』が公開された頃!)からスタートした連載「2000 Discs of 20th Century」。これは、毎回ひとりのミュージシャン(小西康陽氏、カジヒデキ氏、須永辰緒氏等)に100枚のレコードを選出してもらうという企画。その人のオールタイム・フェイバリットというよりは、その時の気分で選ぶというアドリブ的なノリが強く、まるで友人と好きなレコードを語り合う時のような緩やかな雰囲気が誌面から伝わって好きだった。この連載は結局vol.22(2004年1月、ソフィア・コッポラの映画『ロスト・イン・トランスレーション』が公開された頃!)で最終回を迎えるんだけど、その時のゲストだった escalator records社長の仲真史氏の選盤が今でも強く印象に残っている。

仲氏が選んだ100枚の多くはハウスやテクノなどのダンス系の12インチ。当時それこそ escaratorの店舗で売っているようなレコードが並んでいてややケーハクな感じもあったんだけど、最後の最後に選ばれたのは Prefab Sprout の『スティーヴ・マックイーン』。1985年にリリースされた、Prefab Sprout屈指の名盤だ。それまでのケーハクなノリからのギャップもあったけど、その時の言葉「これは人生の中で一番聴いた、というか一番聴くアルバムだね。自分の子供にでも無理やり聴かせるね。まずこれを聴けって」も心に響いた。新しいものに目配せしつつも自分の芯というものは普遍的でなくてはならない。仲氏のその言葉とその精神は今も僕に根付いている。